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ブログ2018.01.22
ベントのメリット・デメリット
【 Tailor Fukuoka Ginza Blog】
こんにちは
テーラーフクオカ銀座店の豊島です。
いきなりですがスーツの後ろの割れのことである
ベントってどんなふうに選んでいますか?
今日は普段はあまりフューチャーされることのない
ベントについてお話をしようと思います。
まずは世の中に流通しているスーツの中で
最も多いであろう“センターベント”です。
センターベントとはその名の通り真ん中で
20cm前後の割れを作ったデザインを指します。
既製のスーツでは圧倒的な比で
このセンターベントが
採用されていると思います。
前から見た時にはヒップまわりが膨らまず
非常にシャープな印象を与えます。
元々、乗馬などをしても中央に割れがあると
馬のお尻で左右に分かれ落ちが良いので
貴族などに常用され
世界各国に拡がりをみせたデザイン。
その由来通りややアウトドアな印象とも言えます。
なので我々もジャケットをオーダーするときなどには
センターベントを選ぶ場合もあります。
近年のスキニースーツ言われる分野とも
親和性が高いのでモード寄りなスーツなどに
採用されることも多いデザインです。
次はこの業界ではお馴染みの
“サンドベンツ”です。
(“サイドベント”とは言いませんので注意)
もともとサイドベンツは西洋剣の出し入れを
スムーズに出来るように考案された
英国のテーラーの意匠だろうと言われています。
英国のスーツを源流としている昨今
サイドベンツは非常にオーセンティックな
意味合いを持ちます
我々自身のスーツのほとんどはこのサイドで
オーダーしています。
センターベントとは対照的でヒップ周りは
正直やや横に膨れやすくなるわけですが
解釈によってはこの膨らみこそがかえって
ウエストのシェイプを強調させ
よりスーツの曲線美を演出してくれるものとも
思っています。
それからバックスタイルが美しいのも
このサイドベンツならでは。
きちんとオーダーメイドでお作りのスーツほど
既製品に比べウエストシェイプは強く入りますので
そのシェイプを活かす上では
背中はひとつなぎになっているサイドベントが◎
そして物理的に割れが二箇所あるので
タイトなジャケットでもベントが開いてしまう
心配もありません。
良いことづくしのようですが
なぜ世の中にサイドベンツのスーツが
少ないのかと申しますと
理由はいくつかあるわけですが
一番は要尺問題が起因しています。
センターベントよりも
生地が多く(長く)かかるわけです。
一着あたりにすると大した長さではありませんが
同じ生地で数百着作るとしたら。。?
数着分は余分に作れる計算になりますから
いい商売になるのはセンターベントというのは
分からなくはないですね^^;
(その他はサイズ直しのしやすさ等々も理由。)
次は上のセンターベントの亜種ともいえる
“フックベント”というもの。
フックという名の通り
かぎ型のベント終わりに由来するデザインで
ほとんどの場合にはこのかぎ型部にミシンステッチを
入れてあるものがほとんどで
そのため引っ掛けなどで
裂けてしまったりが少ない“頑丈な”ベントと言えます。
このブックベントといえば
アメトラをイメージされる方が多いでしょうか
実は礼装用に着用される
モーニングコートも実は
このフックベントが採用されています。
モーニングの場合、テールも長く
引っ掛けやすい形状であるためと
思われます。
(昔のモーニングコートのパターンをみると
普通のセンタ-ベントになっているものもあったので
一概に決まりきった型があるわけではなさそうですが…)
最後は“ノーベント”です。
このノーベントとは
その字のごとく
背割れを設けていない
フラットなバックスタイルです。
意味合いとしては
非常にドレッシーなデザインである
ということに尽きます。
よく引き合いに出すのはタキシードの話。
本来タキシードにベントというものは
基本的に付くことはありません。
よってフォーマルスタイルのスーツにも
付かない場合が多いのです。
そこから我々もドレス向きな
スーツやジャケットなどには
このノーベントを採用することもあります。
私個人的にはスーツをオーダーする際に
このところこのノーベントを選ぶことが
多くなっています。
物理的にベントが開くこともなく
落ちも良いので
美しいバックスタイルのスーツを
仕立てる事ができるからです。
ただしノーベントはエキストラタイトに
仕立てると非常にツレやすいので
適度なゆとりが必須です。
いわゆるバツバツな状態はNGです。
なのでノーベントでオーダーをお考えでしたら
過度なシェイプをかけるのはお気をつけを。
いやなシワが寄りシャープには見えません。
その場合には間違いなくサイドベンツが
おすすめです。
ここまでベントのことで
長文を書いてきましたが
この背割れ一つにも
これまでのスーツの変遷や着こなしの
逸話がつまっています。
ベントに限らず他のデザインにも
それぞれにストーリーがあるものが
多いのがスーツです。
もしお気になる方はオーダー時に
なんなりとスタッフまで
おっしゃってください。
実用も加味しながら
たくさんの提案を
させていただけると思います。
銀座店豊島
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Tailor Fukuoka
Staff投稿者豊島 [Toyoshima]
服飾系大学を卒業後入社し
現在はTailor Fukuokaにて企画会議や撮影などに参画。
メガネとヒゲ(たまにボウタイ)が特徴で
こだわり強めの一児の父。多趣味である。
新宿店店長