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ブログ2021.04.11
AMFステッチとは何か
【Tailor Fukuoka Aoyama Blog】
みなさま、こんにちは。
青山店の嶌野です。
スーツの見栄えを左右する
「AMFステッチ(ピックステッチ)」ってご存知でしょうか。
今回はこの「AMFステッチ」について
名前の由来やステッチをつける必要性など
少々長くなりますが、詳しく解説させて戴きます。
(以前に一度解説をさせて頂いていますが
新しい読者様も増えましたので改めてお話させて戴きます!)
1, そもそもAMFステッチとは
AMFステッチ(ピックステッチ)とは
スーツの襟のフチなどに入るハンド風ステッチのことです。
スーツ好きな方こそ、どこにどう入っているか注目する部分ですね。
ハンドステッチといっても本当に手作業で入れているのは
フルオーダーのスーツなどほんの一部。
ほとんどのスーツは専用の「手縫い風ミシン」で縫われています。
2, AMFステッチの名前の由来
以前、ピックステッチは全て職人の手縫いでした。
手縫いのステッチには相当の技術と時間が必要ですが
ミシンだとどうしても硬い仕上がりになり
美しい衿に仕上らないため、機械化できない工程でした。
その後、ミシンで手仕事の柔らかさを再現しするのに成功したのが
American Machine and Foundry(アメリカン・マシン・アンド・ファンドリー)社。
一時期はハーレーダビットソンを傘下に入れ、
スキー板から原子炉まで作っていたという大企業です。
開発したAMF社にちなんで、
ハンドステッチミシンを「AMFミシン」と呼んでいます。
つまり、AMFステッチ=AMFミシンのステッチ、ということですね。
ミシンであっても綺麗なステッチを入れるには
それなりの技術と時間と手間がかかりますが
手縫いに比べて遥かにかんたんで早く仕上がる
AMFステッチが現在のピックステッチ主流になっています。
ちなみに、
本当に手縫いで入れているステッチの場合はAMFとは呼ばず
「ピックステッチ」「ハンドステッチ」「星止め」などと言います。
3, AMFステッチは必要か?
さて、ここからが本題です。
AMFステッチ、何のためのステッチなのか。
ついていないスーツもあるのに入れる必要があるのか。
結論から言うなら「必要」です!
その理由は大きく3つ。
①綺麗な状態が長続きする
スーツの仕立ての良し悪しは
いかに衿が立体的か、に出てきます。
衿の返りが潰れていると、しっかりした芯を使っていない
ぺらぺらのスーツに見えてしまうことも…
きちんとした作りのスーツは
襟の中身に「毛芯」を使っており
胸・衿部分をなるべく立体的に仕立てます。
きちんとした仕立てのならば、毛芯と衿の表は接着などはしませんので
AMFステッチで留めることでより形が崩れにくくなります。
(スーツによっては生地に芯を接着する製法もあります。
芯が浮くことはありませんが、衿が潰れてしまうと戻りにくく
立体感を綺麗にキープするのは難しくなります)
②印象が良くなる
上記の理由からクラシックなテーラーメイドのスーツには
ステッチが入ることが多く、既製品でも仕立てにこだわったものは
ほとんどにAMFステッチが入っています。
接着芯のスーツにも付いていることはありますが
その場合でもコストをかけて手間のかかるステッチを追加しているわけです。
ですので、このステッチが入っているスーツを着ていると
「きちんとしたスーツを着ている人」「服装に気を使っている人」
という印象を持たれやすくなります。
③デザインのアクセントに
一目立つ襟回りのステッチですので
ステッチの有無で見た目の印象が結構変わります。
スタンダードに襟のフチにステッチをつけると
きちんとした印象。
カジュアルに見せたいジャケットやコットンスーツなどは
ステッチをあえてやや内側に入れたり
糸の色を変えたりすることも。
(ジャケットの場合、スーツより厚手の生地が多いので
そのふくらみをつぶさないためにも内側に入れることが多いのです)
見た目の印象を左右し、スーツの構造にも影響のある
AMFステッチ。
Tailor Fukuokaのスーツは
衿の芯を接着をしない
本格的な毛芯使用した仕立てですので
どのモデルにもAMFステッチが
標準装備となっております。
見た目が好きじゃない…ということで
省かれる方もいますが、見慣れてくればむしろ
ステッチがないと落ち着きません。
ぜひ、ステッチは省かずお付けください。